「アメリカ西海岸の乾いた風と、突き抜けるようなホップの香りを体感したい」。そんな気分の夜に、自信を持っておすすめできる一本があります。
今回ご紹介するのは、カリフォルニア州ロングビーチの実力派、Beachwood Brewing(ビーチウッドブルーイング)が醸す「AMALGAMATOR(アマルガメーター)」。かつては日本で見かけることも少なかったこの”幻のIPA”ですが、近年は安定して楽しめるようになりました。
「IBU70越えの苦味」というスペックからは想像できないほどのフルーティーさと、ある意味で”危険”なほどの飲みやすさ。5〜6年前、私が初めて飲んだ時に受けた衝撃は今も色褪せません。今回は、そんなアマルガメーターの魅力を、長年のファン視点でたっぷりとレポートします。
Beachwood Brewing「AMALGAMATOR(アマルガメーター)」とは?
数あるアメリカンクラフトビールの中でも、特に「ホップの魔術師」として信頼を置いているのがBeachwood Brewingです。彼らの代表作とも言える「AMALGAMATOR(アマルガメーター)」について、まずはその背景とスペックを深掘りしていきましょう。
カリフォルニア・ロングビーチ発!BBQ店から始まった実力派ブルワリー
Beachwood Brewing(ビーチウッドブルーイング)のルーツは、実はビール醸造所ではなく、一軒のBBQレストランにあります。
2006年、カリフォルニア州シールビーチに、Gabe Gordon(ゲイブ・ゴードン)氏と妻のLena Perelman(レナ・ペレルマン)氏が「Beachwood BBQ」をオープンしたのが全ての始まりでした。
「美味しいBBQ料理には、それに負けない最高のクラフトビールが必要だ」
そんな情熱を持った彼らは、当初は厳選したゲストビールを提供していましたが、2011年にロングビーチへ拠点を広げると同時に、自社醸造をスタートさせます。この時、醸造責任者として迎えられたのが、天才的なホームブルワーとして知られていたJulian Shrago(ジュリアン・シュラゴ)氏でした。
彼らの実力はすぐに証明され、2014年のGreat American Beer Festival(GABF)では「Large Brewpub of the Year」を受賞。名実ともにアメリカを代表する実力派ブルワリーへと成長を遂げたのです。料理人としての味覚と、エンジニア出身のブルワーによる緻密な設計。この二つが融合しているからこそ、彼らのビールは単に「苦い」だけでなく、食事に合う絶妙なバランスを保っているのだと感じます。
名前が示す「融合」の意味と、モザイクホップへのこだわり
「AMALGAMATOR(アマルガメーター)」という少し聞き慣れない名前。直訳すると「融合させるもの」や「混合機」といった意味を持ちます。
一見、無骨な工業製品のような響きですが、実際に飲めばそのネーミングの妙に気付かされます。このビールにおける「融合」とは、モザイクホップが作り出す複雑かつ調和の取れた香りのアマルガム(融合体)を指しているのです。
このビールの主役は、クラフトビールファンにはお馴染みの人気ホップ「Mosaic(モザイク)」。これをドライホッピング(発酵終了後にホップを漬け込む製法)で惜しげもなく大量に使用しています。モザイクホップ特有の、パッションフルーツやブルーベリーのような甘いアロマと、土や松脂を思わせるグラッシーな香り。相反するようにも思えるこれらの要素を、完璧なバランスで一つにまとめ上げているのが、このアマルガメーターなのです。
ウエストコーストIPAの王道を行く「ドライで強烈」なスペック
ここで、ビールの骨格となる基本スペックを確認しておきましょう。
- スタイル: West Coast IPA(ウエストコーストIPA)
- アルコール度数(ABV): 7.1%
- 苦味の単位(IBU): 70
- 使用ホップ: Mosaic
特筆すべきは「IBU 70」という数値です。一般的な日本の大手ビールがIBU 20前後であることを考えると、単純計算で3倍以上の苦味成分が含まれていることになります。
しかし、Beachwoodの真骨頂はここからです。彼らは「Honey Malt(ハニーモルト)」などの麦芽を巧みに使い、ボディを極限までライトに仕上げています。これにより、数値上の苦味は強くても、口当たりは驚くほど軽やか。「苦いのに飲みやすい」という、ウエストコーストスタイルの理想形を体現しているのです。
【実飲レポ】アマルガメーターを実際に飲んでみた感想
それでは、いよいよ実際に抜栓していきましょう。今回は冷蔵庫でしっかりと冷やした状態から、少し温度が上がってくる過程も楽しんでみます。

外観:グラスに注いだ瞬間に広がる黄金色とクリーミーな泡
プシュッという小気味良い音と共に缶を開け、グラスに注いでいきます。
液色は、これぞウエストコーストIPA!と言いたくなるような、透き通った美しい黄金色(ライトゴールド)。最近流行りのヘイジーIPA(白く濁ったIPA)とは対照的に、向こう側が透けて見えるほどのクリアな輝きです。
泡立ちは非常にきめ細やかでクリーミー。真っ白なヘッドが液体の上にふんわりと乗り、しばらく経っても消えずに残ります。この泡が蓋の役割を果たし、香りを逃さないように守ってくれているのが分かりますね。グラスを透かして見える炭酸の気泡が立ち上る様子は、見ているだけで喉が鳴ります。
香り:パッションフルーツの甘さと「Dank(ダンク)」な樹脂香の競演
グラスに鼻を近づけた瞬間、思わず「うわっ、良い香り…」と声が漏れてしまいました。
最初に飛び込んでくるのは、完熟したパッションフルーツやブルーベリーを思わせる、南国フルーツのような甘く濃厚なアロマです。モザイクホップの特徴が全開に発揮されています。
そして、その奥から追いかけてくるのが、松の木や森林浴を思わせる清々しい香り。クラフトビール用語で「Dank(ダンク)」と表現される、少し湿り気を帯びた樹脂や草のような独特なニュアンスもしっかりと感じられます。
「甘いフルーツ」と「野生的な植物」。この二つの香りが喧嘩することなく、複雑なレイヤーとなって鼻腔をくすぐります。まさに名前の通り、香りが「融合」している瞬間です。
味わい:アルコール度数7.1%を忘れさせる「危険なドリンカビリティ」
一口飲んでみると、その印象はさらに鮮烈なものになります。
口に含んだ瞬間は、香りのイメージ通りフルーティーでジューシーな甘味が一瞬広がります。しかし、それはすぐにシャープな苦味へと変化し、舌の上を駆け抜けていきます。
驚くべきは、そのボディの軽さです。アルコール度数7.1%といえば、本来なら喉にカッとくる熱さを感じたり、飲みごたえが重くなったりしがちな数値。ところが、アマルガメーターにはそれが全くありません。
モルトの甘さは必要最小限に抑えられており、極めてドライ(辛口)。水のように…とまでは言いませんが、抵抗なくスルスルと喉を通っていきます。ライターとして正直に言わせてもらうと、これは「非常に危険な飲みやすさ」です。気づけばグラスが空になっている、そんな魔力を持っています。
余韻:キレのある苦味が口内をリセットし、次の一口を誘う
飲み込んだ後に残るのは、舌の奥をキュッと引き締めるような、クリーンで上質な苦味。嫌な渋みや雑味は一切なく、松脂のような爽やかな香りが鼻に抜けていきます。
この「キレの良さ」が、次の一口を誘う呼び水となります。口の中がリセットされるので、何度飲んでも一口目の感動が蘇る感覚。飲み疲れしないIPAの完成形と言っても過言ではないでしょう。5〜6年前に初めて飲んだ時も「なんだこの完成度は!」と驚きましたが、改めて飲んでもその感動は微塵も揺らぎませんでした。
もっと美味しく楽しむ!おすすめのペアリングと購入事情
「AMALGAMATOR」単体でも十分に完成されたビールですが、食事と合わせることでそのポテンシャルはさらに引き出されます。
Beachwood Brewingのルーツが「BBQレストラン」であることを思い出してください。彼らのビールが食事に合わないはずがないのです。
元BBQ店のDNA!ジューシーな肉料理との相性は間違いなし

IPAビールとグリル肉料理のペアリング
やはり鉄板の組み合わせは「肉料理」です。
ステーキやスペアリブなど、脂の乗ったジューシーなお肉をガッツリ頬張り、口の中に脂が残っている状態でアマルガメーターを流し込む……。想像しただけで優勝間違いなしの組み合わせです。
ビールの持つ強い炭酸と、IBU70のキレのある苦味が、肉の脂っこさをきれいに洗い流してくれます(ウォッシュ効果)。口の中がサッパリするので、また次の一口が美味しくなる無限ループ。特に、甘辛いBBQソースを使った料理とは、モザイクホップのフルーティーさがリンクして相性抜群です。
スパイス香る「タコス」や「ピザ」で西海岸気分を演出

タコスとピザとクラフトIPAビールの西海岸スタイル
個人的に猛プッシュしたいのが、「タコス」や「ペパロニピザ」といった、少しジャンクでスパイシーな料理とのペアリング。
カリフォルニア、特にロングビーチ周辺はメキシカンフードが美味しいエリアでもあります。
チリペッパーやクミンなどのスパイスが効いたタコスの刺激を、アマルガメーターのトロピカルな香りが包み込み、後味のドライさが全体を引き締めてくれます。
週末の夜、映画でも観ながらピザを片手にこのビールを飲む。それだけで、気分は一気に西海岸のビーチサイドです。気取らず、ラフに楽しむのがこのビールの正解スタイルかもしれません。
「幻のビール」は過去の話?日本でも入手しやすくなった背景
さて、肝心の入手方法についてです。
私がこのビールを初めて飲んだ5〜6年前は、日本に入ってくる本数も少なく、ビアバーで見かけたら「奇跡!」と思って即注文するようなレアキャラでした。
しかし、現在は状況が大きく変わりました。これには、アメリカンクラフトビールの輸入において絶大な信頼を誇る「ナガノトレーディング」の存在が大きく関わっています。
ナガノトレーディングによる冷蔵輸送で現地の味をそのままに
ホップを大量に使用するIPA、特にアマルガメーターのような香りが命のビールにとって、最大の敵は「熱」と「時間」です。常温で長時間輸送されると、あの爆発的なフルーティーさは見る影もなく劣化してしまいます。
ナガノトレーディングは、現地ブルワリーから日本の販売店に届くまで、100%冷蔵管理(コールドチェーン)を徹底しているインポーターです。
おかげで、私たちはカリフォルニアのタップルームで飲むのとほぼ変わらない、フレッシュな状態のアマルガメーターを日本で楽しむことができます。「最近、Beachwoodよく見るな」と感じている方は、ぜひインポーターのシールもチェックしてみてください。安定供給のおかげで、自宅の冷蔵庫に常備できるようになったのは本当にありがたい限りです。
どんな人におすすめ?IPA初心者から愛好家までハマる理由
このビールは、以下のような方に特におすすめです。
- 「苦いだけのIPA」に飽きてしまった人
苦味と香りのバランス、そして「甘くないのにフルーティー」という魔法のような体験が待っています。 - これからウエストコーストIPAを試してみたい人
IBU70という数値にビビる必要はありません。驚くほど飲みやすいので、入門編としても最適です(ただし、度数は高いので飲み過ぎ注意!)。 - 西海岸のカルチャーが好きな人
味だけでなく、ラベルデザインやブルワリーの背景も含めて楽しめる一本です。
まとめ:西海岸の風を感じる一杯。見かけたら即確保が正解!
今回は、Beachwood Brewingの傑作「AMALGAMATOR(アマルガメーター)」をご紹介しました。
モザイクホップの魅力を極限まで引き出したフルーティーな香り、IBU70を感じさせない軽快なボディ、そして次の一口を誘うドライなキレ。
「融合(Amalgamator)」の名にふさわしく、全ての要素が高いレベルでまとまった、ウエストコーストIPAの一つの到達点と言えるでしょう。
SAKEVIVA読者の皆さん、もし酒屋さんやビアバーでこの缶を見かけたら、迷わず手に取ってみてください。
プシュッと開けた瞬間、あなたの部屋にカリフォルニアの爽やかな風が吹くはずです。それでは、今夜も良いビールを!Cheers!
Beachwood “AMALGAMATOR” 商品詳細データ
| 項目 | 詳細情報 |
|---|---|
| 商品名 | AMALGAMATOR(アマルガメーター) |
| ブルワリー | Beachwood Brewing(ビーチウッドブルーイング) |
| 生産地 | アメリカ / カリフォルニア州 ロングビーチ |
| スタイル | West Coast IPA |
| アルコール度数 (ABV) | 7.1% |
| 苦味 (IBU) | 70 |
| 使用ホップ | Mosaic |
| パッケージ | 473ml缶 / 樽(ドラフト) |
| 主なインポーター | 株式会社ナガノトレーディング |
| 参考価格 | 1,200円〜1,500円前後(販売店により異なる) |
