最近、レストランやワインショップでおしゃれなオレンジ色のワインを見かける機会が増えていませんか?
「オレンジワイン」という名前は聞いたことがあるけれど、「白でも赤でもロゼでもないってどういうこと?」「一体どんな味がするの?」と、気になっている方も多いのではないでしょうか。
実はこのオレンジワイン、その美しい見た目だけでなく、奥深い歴史と個性的な味わいを持ち、世界中のワイン愛好家を魅了している「第4のワイン」なんです。
この記事では、今さら聞けないオレンジワインの基本から、その魅力的な味わいや香り、料理とのペアリング、そして初心者でも楽しめる選び方まで、余すところなくご紹介します。
新しいワインの世界の扉を開けて、あなただけのお気に入りの一杯を見つける旅に出かけましょう。
オレンジワインとは?~白でも赤でもない第4のワイン~
その魅力的な色合いから、多くの人々を惹きつけるオレンジワイン。
一体どのような製法で、どのような歴史を経て私たちの元に届いているのでしょうか。白、赤、ロゼとの違いを紐解きながら、その正体に迫ります。
白ワイン用のブドウを赤ワインのように造る「醸し」製法

オレンジワインがなぜオレンジ色をしているのか、その秘密は特殊な製造方法にあります。
一言で説明すると、「白ブドウを使い、赤ワインの製法で造られるワイン」です。
通常の白ワインは、収穫した白ブドウを圧搾し、果皮や種を取り除いた果汁だけを発酵させて造られます。 これにより、スッキリとしたクリアな色合いと味わいが生まれます。
一方、赤ワインは黒ブドウを使い、果皮や種、時には茎も一緒にタンクに入れ、果汁と共に一定期間漬け込みながら(=醸しながら)発酵させます。 この「醸し(マセラシオン)」の工程で、果皮に含まれる色素(アントシアニン)や渋み成分(タンニン)が液体に溶け出し、赤ワイン特有の色と複雑な味わいが生まれるのです。
オレンジワインは、この赤ワインの「醸し」の工程を、白ブドウで行います。 つまり、白ブドウの果皮や種を果汁と一緒に漬け込んで発酵させることで、それらの成分がワインに溶け出し、美しいオレンジの色調と、白ワインにはないほのかな渋みや複雑な香り、豊かな旨味を持つワインが誕生するのです。
以下の表は、それぞれのワインの製法の違いをまとめたものです。 オレンジワインの立ち位置を理解するのに役立ちます。
種類 | 使用ブドウ | 製法(醸しの有無) | 主な特徴 |
赤ワイン | 黒ブドウ | 果皮・種と一緒に醸す | 色素が濃く、タンニンによる渋みとコクがある |
白ワイン | 白ブドウ | 醸さずに果汁のみ発酵 | クリアな色合いで、フレッシュな果実味と酸味が特徴 |
ロゼワイン | 黒ブドウ | 短時間だけ醸す、または赤白を混ぜる | ピンクの色合いで、赤と白の中間的な味わい |
オレンジワイン | 白ブドウ | 果皮・種と一緒に醸す | オレンジの色合いで、複雑な香りと旨味、穏やかな渋み |
実は歴史は古い!発祥地ジョージアの伝統製法
「オレンジワイン」という呼び方は2000年代に入ってから広まった新しいものですが、その製造方法の歴史は非常に古く、約8000年前にまで遡ると言われています。
ワイン発祥の地として知られるコーカサス地方のジョージアでは、「クヴェヴリ」と呼ばれる大きな甕(かめ)を地中に埋め、その中でブドウを果皮や種ごと発酵・熟成させる伝統的なワイン造りが、古代から脈々と受け継がれてきました。
この伝統製法こそが、オレンジワインの原点です。 ジョージアでは、この製法で造られたワインを「アンバーワイン(琥珀色のワイン)」と呼び、現在も国の文化として大切に受け継がれています。
この古代製法が、20世紀末にイタリアのフリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州の生産者によって再評価されたことをきっかけに、スロヴェニアやフランス、そして世界中のワイン産地へと広まっていきました。
自然な製法を重視する「ナチュラルワイン(自然派ワイン)」のムーブメントとも共鳴し、オレンジワインは世界的なトレンドとして注目を集めるようになったのです。
その呼び名は新しくとも、その背景には人類のワイン造りの原点とも言える、長く深い歴史が横たわっています。
果皮や種子の成分が溶け込んだ美しいオレンジの色合い

オレンジワインの最大の特徴であるその美しい色合いは、どのようにして生まれるのでしょうか。
前述の通り、白ブドウの果皮や種を果汁と一緒に漬け込む「醸し」の工程が鍵を握っています。
ブドウの果皮には「ポリフェノール」と呼ばれる成分が豊富に含まれており、これがワインの色や味わいに大きな影響を与えます。
特に、「フラボノイド」や「タンニン」といった成分が、醸しの期間中にゆっくりと液体に溶け出します。
これらの成分自体は無色に近いものですが、酸化熟成の過程を経ることで、黄色からオレンジ、そして琥珀色へと変化していくのです。
醸しの期間が長ければ長いほど、より多くの成分が抽出され、ワインの色は濃く、味わいは複雑になります。
生産者によっては、数日間の短い醸しで淡いオレンジ色に仕上げることもあれば、数ヶ月から一年以上という長い時間をかけて、濃厚な琥珀色のワインを造ることもあります。
そのため、オレンジワインと一括りに言っても、その色合いは淡い麦わら色に近いものから、鮮やかなオレンジ、赤みがかった銅色、そして深い琥珀色まで、実に多彩なグラデーションが存在します。
この色の濃淡が、味わいの複雑さや渋みの強さをある程度示唆してくれるのも、オレンジワイン選びの面白いポイントの一つと言えるでしょう。
オレンジワインの気になる味や香りを徹底解説!
製造方法や歴史がわかったところで、次に気になるのはやはりその「味わい」ではないでしょうか。 白ワインの爽やかさと赤ワインの複雑さを併せ持つと言われるオレンジワイン。 その奥深い世界を、具体的な香りや味わいの特徴、そして最高の楽しみ方と共にご紹介します。
複雑で奥深い!渋みと旨味の絶妙なバランス

オレンジワインの味わいを表現する上で最も重要なキーワードは、「複雑さ」と「旨味」、そして「渋み」です。
白ワインのようなフレッシュな果実味や酸味を感じさせつつも、果皮や種由来の穏やかな渋み(タンニン)と、アミノ酸などに由来する豊かな旨味をしっかりと感じることができます。 香りは非常に複雑で、アプリコットやカリン、黄桃、ドライオレンジといった果実のアロマに加え、紅茶や金木犀、ハーブ、スパイス、そして時には出汁や漬物のような発酵由来のニュアンスが感じられることもあります。 口に含むと、果実の凝縮感と共に、心地よい渋みが舌の上を優しく刺激し、味わいに奥行きと骨格を与えてくれます。 この独特の渋みと旨味があるからこそ、白ワインでは物足りなく、赤ワインでは重すぎると感じるような料理にも、見事に寄り添ってくれるのです。 まさに、白、赤、ロゼのどれとも違う、唯一無二の味わい。それがオレンジワイン最大の魅力です。
これさえ押さえれば間違いなし!オレンジワインと料理のペアリング例

その複雑な風味と豊かな旨味を持つオレンジワインは、驚くほど幅広いジャンルの料理と相性が良いのが特徴です。
白ワインの感覚で合わせることも、軽めの赤ワインのように楽しむこともできる、まさに食卓の万能選手。 ここでは、特におすすめのペアリングの例をいくつかご紹介します。
スパイスやハーブを使った料理とのペアリング
オレンジワインが持つ複雑なハーブやスパイスの香りは、同様の風味を持つ料理と素晴らしい相性を見せます。
例えば、クミンやコリアンダーを効かせたエスニック料理、ローズマリーやタイムを使った鶏肉のロースト、さらにはカレーともよく合います。
ワインの風味が料理のスパイス感を引き立て、互いの魅力を高め合う絶妙なマリアージュを楽しむことができるでしょう。
特に、中東のフムスやファラフェル、タイのグリーンカレーなどとは鉄板の組み合わせです。
発酵食品や旨味の強い食材とのペアリング
オレンジワインの製法由来の旨味成分は、味噌や醤油、チーズ、きのこ、発酵させた漬物など、旨味(UMAMI)を豊富に含む食材と深く共鳴します。
意外に思われるかもしれませんが、実は和食との相性も抜群です。
例えば、豚の角煮や西京焼き、きんぴらごぼうなど、少し甘みのある醤油ベースの料理と合わせると、ワインの果実味と料理の甘みが調和し、後味をタンニンが引き締めてくれます。
また、ウォッシュタイプのチーズやハードタイプのチーズの塩気と旨味も、オレンジワインの豊かな風味によく合います。
中華料理や少し脂のある肉料理とのペアリング
しっかりとした骨格と穏やかな渋みを持つオレンジワインは、少し脂分のある料理とも渡り合えます。
例えば、餃子や麻婆豆腐、油淋鶏といった中華料理の油分を、ワインの酸味とタンニンがさっぱりと洗い流してくれます。
また、豚肉のソテーやパテ・ド・カンパーニュといった肉料理にもおすすめです。
赤ワインほど重くなく、白ワインよりも味わいに厚みがあるため、料理の風味を邪魔することなく、心地よいバランスを生み出してくれます。
もっと美味しくなる!おすすめの飲み方と適温
オレンジワインの複雑な香りと味わいを最大限に引き出すためには、飲むときの温度が非常に重要です。
キリッと冷やして飲むのが一般的な白ワインとは異なり、オレンジワインは少し高めの温度で楽しむのがおすすめです。
具体的には、冷蔵庫から出してすぐの状態(5℃前後)ではなく、10℃~15℃くらいが適温とされています。
冷やしすぎると、豊かな香りや旨味が閉じてしまい、渋みだけが際立ってしまうことがあります。 逆に、少し温度を上げることで、隠れていた華やかな香りや果実の甘みが花開き、味わいのバランスが整います。
グラスは、白ワイン用よりも少し大きめの、ブルゴーニュ型のような丸みを帯びたグラスを選ぶと、より香りが立ちやすくなります。
まずは少し冷やしめの温度からスタートし、グラスの中でゆっくりと温度が上がっていくことによる香りと味わいの変化をじっくりと楽しむのも、オレンジワインの醍醐味の一つと言えるでしょう。
初心者必見!オレンジワインの選び方から購入方法まで

オレンジワインの魅力が分かったら、いよいよ実際に試してみたくなりますよね。
しかし、いざワインショップに行っても「どれを選んだらいいかわからない」と戸惑ってしまうかもしれません。
ここでは、最初の1本を選ぶためのヒントから、代表的な産地、そして購入できる場所まで、分かりやすくガイドします。
最初の1本におすすめ!失敗しないオレンジワインの選び方
数あるオレンジワインの中から、初心者が最初の1本として選ぶ際に失敗しにくいポイントは、「醸しの期間が短め」で「クセが強すぎない」タイプを選ぶことです。
これらは比較的、白ワインに近いすっきりとした味わいで、果実味も感じやすいため、オレンジワイン入門にぴったりです。 具体的な選び方のポイントをいくつかご紹介します。
色合いで選ぶ
前述の通り、色の濃さは味わいの複雑さや渋みの強さとある程度比例します。
まずは、色の淡い、麦わら色や淡いオレンジ色のものから試してみるのがおすすめです。
これらは醸しの期間が短いことが多く、渋みが穏やかでフルーティーな味わいの傾向があります。
産地で選ぶ
オレンジワインの伝統的な産地であるジョージアのものは、個性的な味わいのものが多いため、まずはイタリアやフランス、スペインといった、飲み慣れたワインを造っている国のオレンジワインから試してみるのも良いでしょう。
特にイタリアのものは、比較的クリーンで果実味豊かなタイプが多く見つかります。
価格帯で選ぶ
まずは2,000円~4,000円程度の価格帯で探してみるのがおすすめです。
この価格帯には、品質が高く、かつオレンジワインの基本的な特徴をしっかりと感じられるコストパフォーマンスの良いワインが多くあります。
ワインショップの店員さんに「オレンジワイン初心者で、フルーティーなものが飲みたい」と相談してみるのも確実な方法です。
代表的な産地とブドウ品種を知ってもっと楽しく
オレンジワインは今や世界中で造られていますが、特に押さえておきたい代表的な産地と、そこで使われる主なブドウ品種があります。 これを知っておくと、ワイン選びがさらに楽しくなります。
産地 | 主なブドウ品種 | 特徴 |
ジョージア | ルカツィテリ、ムツヴァネ | 発祥の地。クヴェヴリで造られる伝統的なスタイル。 |
イタリア | リボッラ・ジャッラ、フリウラーノ、ピノ・グリージョ | 特に北東部のフリウリ地方が有名。 |
スロヴェニア | レブーラ | イタリアのフリウリと国境を接しており、高品質なオレンジワインの産地として知られる。 |
フランス | サヴァニャン、ゲヴュルツトラミネール | ジュラ地方やアルザス地方で特徴的なオレンジワインが造られる。 |
どこで買える?主な購入場所とそれぞれのメリット
オレンジワインは、以前に比べて格段に手に入りやすくなりました。
主な購入場所と、それぞれのメリット・デメリットを理解して、自分に合った方法で探してみましょう。
ワイン専門店・酒屋
最大のメリットは、知識豊富なスタッフに相談できることです。
「こんな料理に合わせたい」「こんな味わいが好み」といったリクエストを伝えれば、的確な一本を提案してもらえます。 品揃えも豊富で、個性的な生産者のワインに出会える可能性も高いでしょう。
百貨店のワイン売り場
ソムリエやワインアドバイザーが常駐していることが多く、安心して相談できます。
ギフト用のラッピングなどにも対応してくれるため、贈り物として選びたい場合にも便利です。 品質の良い、厳選されたワインが置かれていることが多いです。
オンラインショップ
最大の魅力は、その圧倒的な品揃えと、自宅にいながら気軽に購入できる利便性です。
産地やブドウ品種、価格帯で絞り込んで検索できるため、効率的に好みのワインを探すことができます。
口コミやレビューを参考にできるのもメリットですが、実物を見たり、試飲したりできないのがデメリットです。
まとめ:オレンジワインの魅力に触れて、新しいワインの世界を旅しよう
この記事では、オレンジワインの基本的な知識から、その奥深い味わい、楽しみ方、選び方までを詳しくご紹介してきました。
白ブドウの果皮や種も一緒に発酵させるという、古くて新しい製法から生まれるオレンジワイン。
それは、白ワインの爽やかさ、赤ワインのコクと渋み、そしてロゼワインの華やかさとも違う、全く新しい味わいの体験を私たちに提供してくれます。
何よりも、その懐の深さがオレンジワインの魅力です。 エスニック料理から繊細な和食まで、様々な国の料理に寄り添い、食卓をより豊かに彩ってくれます。
もしあなたがまだオレンジワインを飲んだことがないのであれば、ぜひこの機会に最初の1本を手に取ってみてください。
そこにはきっと、今まで知らなかった新しいワインの感動と発見が待っているはずです。
美しいオレンジ色の液体に秘められた悠久の歴史と生産者の情熱に思いを馳せながら、あなただけの特別なワインの世界を旅してみてはいかがでしょうか。
