ジリジリと照りつける太陽に、蒸し暑い空気。 日本の夏は、ときに私たちを少しだけ疲れさせてしまいます。
そんな季節の晩酌に、キリッと冷えたビールやチューハイを選ぶ方は多いかもしれませんが、今年は「夏酒」で涼をとるのはいかがでしょうか。
「夏酒」とは、その名の通り、夏に美味しく飲めるように造られた日本酒のこと。
一般的な日本酒のイメージとは一味違う、すっきりと爽やかな飲み口、軽快なアルコール度数、そして見た目にも涼しげなボトルデザインが魅力です。
この記事では、「夏酒って普通の日本酒と何が違うの?」という基本的な疑問から、自分好みの1本を見つけるための選び方、そして2025年におすすめの銘柄まで、夏酒のすべてを徹底解説します。
お気に入りの夏酒を見つけて、今年の夏をより一層楽しく、美味しく過ごしましょう。
- そもそも夏酒とは?
- 【2025年版】心ときめくおすすめ夏酒6選
- 一目でわかる!2025年 夏酒ナビゲーター
- 【モダン&ジャケ買い】夏の音を味わう、爽快にごり:三井の寿 夏純にごり CICALA (福岡県・みいの寿)
- 【トレンド&爽快】九十九里の海風を感じるクリアな味わい:寒菊 OCEAN99 青海 (千葉県・寒菊銘醸)
- 【甘口&華やか】夏の光を纏う、エレガントな透明感:羽根屋 夏の純米吟醸 (富山県・富美菊酒造)
- 【定番&食中酒】現代の王道、疾風のごとき爽快感:紀土 -KID- 純米吟醸 夏ノ疾風 (和歌山県・平和酒造)
- 【個性派にごり】シュワっと弾ける、米の旨味サイダー:陸奥八仙 夏どぶろっく (青森県・八戸酒造)
- 【新体験】氷で完成する、革新の夏酒:玉川 Ice Breaker (京都府・木下酒造)
- もう迷わない!自分に合った夏酒の選び方
- もっと美味しく!夏酒の楽しみ方と正しい保存方法
- まとめ:お気に入りの夏酒で、最高の夏を迎えよう!
そもそも夏酒とは?
「夏酒」という言葉を耳にする機会は増えましたが、具体的にどのようなお酒なのか、ご存知でない方も多いかもしれません。
まずは、夏酒が持つ基本的な特徴や、多くの人を惹きつけるその魅力について深掘りしていきましょう。
夏酒に明確な定義はない?いつ頃に飲めるお酒?

実は、「夏酒」という言葉には、酒税法などで定められた明確な定義は存在しません。
一般的には、各酒蔵が「暑い夏に、さっぱりと美味しく飲んでもらいたい」という想いを込めて、春の終わりから夏にかけて(おおむね4月〜8月頃)期間限定で出荷する日本酒の総称として使われています。
冬から春にかけて造られた新酒を、夏向けに特別な仕立てでリリースするのが特徴です。
そのため、この時期にしか味わえない季節感あふれるお酒として、多くの日本酒ファンに親しまれています。
一般的な日本酒との違いは?味わいや製法に見る4つの特徴
夏酒がなぜ夏にぴったりなのか、その秘密は味わいや製法に隠されています。 一般的な日本酒(特に秋から冬に出回る、旨味の乗ったタイプ)と比較しながら、その特徴を見ていきましょう。
夏酒の主な特徴について、以下に4つのポイントを挙げました。 これらの要素が組み合わさることで、夏に心地よい清涼感を生み出しています。
①すっきり爽やかな味わい
夏酒の最も大きな特徴は、その爽快な飲み口です。
甘さや旨味は控えめで、軽快な酸味が際立つものが多く、後味のキレが良いのが魅力。 まるで夏のそよ風のように、スッと喉を潤してくれます。
②低めのアルコール度数
一般的な日本酒のアルコール度数が15〜16度程度であるのに対し、夏酒は13〜14度台と、やや低めに設定されていることが多くあります。
原酒のままではなく加水調整を行うことで、軽快な飲み口を実現し、暑い日でも飲み疲れしにくいように工夫されています。
③フレッシュさを保つ製法
搾ったお酒のフレッシュ感を活かすため、通常2回行う「火入れ」という加熱殺菌処理を1回のみに留めた「生貯蔵酒」や「生詰め酒」が多く見られます。
また、一切火入れをしない「生酒」や、瓶内二次発酵による微発泡感(ガス感)を残したタイプもあり、若々しく爽やかな香味を楽しむことができます。
④涼しげなボトルデザイン
味わいだけでなく、見た目の涼やかさも夏酒の大きな魅力です。
透明感のある青いボトルや、金魚、花火、風鈴といった夏を連想させるイラストが描かれたラベルが多く、目でも季節を感じることができます。 食卓に置くだけで、一気に夏の雰囲気を演出してくれます。
【2025年版】心ときめくおすすめ夏酒6選
早速、数ある夏酒の中から、特におすすめしたい銘柄を厳選してご紹介します。
単に「爽やかで飲みやすい」だけではない、造り手の哲学や物語が詰まった、心ときめく6本です。
一目でわかる!2025年 夏酒ナビゲーター
銘柄 | タイプ | 味わい | こんな人・シーンにおすすめ |
三井の寿 夏純にごり CICALA | モダン&ジャケ買い | 爽快にごり・リンゴ酸 | ジャケ買いしたい方、甘すぎないにごり好き、夏の食中酒に |
寒菊 OCEAN99 青海 | トレンド&爽快 | フルーティー・軽快 | 気軽な家飲み、友人との集まりに、海辺のBBQで |
羽根屋 夏の純米吟醸 | 甘口&華やか | エレガント・透明感 | 日本酒初心者、食前酒として、女性へのギフトに |
紀土 -KID- 純米吟醸 夏ノ疾風 | 定番&食中酒 | 爽快・キレ | 食事と合わせたい方、初心者から通まで、夏の和食と共に |
陸奥八仙 夏どぶろっく | 個性派・にごり | 微発泡・ドライ | いつもと違う体験をしたい方、パーティーの主役に |
玉川 Ice Breaker | 新体験 | 濃厚・ロック向け | 探求心のある方、新しい飲み方に挑戦したい方 |
【モダン&ジャケ買い】夏の音を味わう、爽快にごり:三井の寿 夏純にごり CICALA (福岡県・みいの寿)

画像出典:後藤商店|みいの寿 夏純にごり Cicala -チカーラ- 720ml
「CICALA(チカーラ)」とはイタリア語で「セミ」のこと。緑のボトルにクマゼミをデザインしたラベルは、思わず手に取りたくなるモダンさで、毎年人気の季節限定シリーズです。
にごり酒でありながら、味わいは驚くほど爽快。その秘密は、リンゴ酸を多く生み出す特殊な酵母にあります。
まるでキリッと冷えた青リンゴをかじったような、シャープで心地よい酸味が口の中に広がり、後味はすっきり。夏の暑さを忘れさせてくれる、新感覚のドライなにごり酒です。
蔵元: 株式会社みいの寿
産地: 福岡県
アルコール度数: 15%
参考価格 (720ml): ¥1,733 (税込)
【トレンド&爽快】九十九里の海風を感じるクリアな味わい:寒菊 OCEAN99 青海 (千葉県・寒菊銘醸)
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千葉の地酒寒菊 OCEAN99 青海-Summer Sea- 純米吟醸無濾過生原酒【寒菊銘醸】720ml
今、最も勢いのある酒蔵の一つが千葉県の寒菊銘醸です。
その夏の本命が、この「青海(おうみ)」。コンセプトは蔵からほど近い九十九里浜の「透き通るような青い空と海。
蜜を含んだリンゴのような瑞々しい果実味と、ミネラリーで軽快なキレが、夏バテ気味の身体を癒してくれます。
海を映したかのような美しいブルーのボトルも涼しげで、あらゆる夏のシーンに寄り添う万能選手です 。
蔵元: 寒菊銘醸
産地: 千葉県
アルコール度数: 14%
参考価格 (720ml): ¥1,815 (税込)
【甘口&華やか】夏の光を纏う、エレガントな透明感:羽根屋 夏の純米吟醸 (富山県・富美菊酒造)
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羽根屋 夏の純米吟醸 生酒 1.8L【要冷蔵】日本酒 清酒 1800ml 一升瓶 富山 富美菊酒造 夏季 はねや
「日本酒は少し苦手…」という方にこそ試してほしい、優美で華やかな一本。その品質はIWCなど海外のコンクールでも高く評価されています。
コンセプトは「夏のマリンブルーの海に抱かれたような透明感と、寄せては広がる優しい余韻」。
瑞々しい果実のようなジューシーな旨味と、突き抜ける青空のようにクリアな後口が特徴で、驚くほど滑らかに喉を通り過ぎていきます。食前酒や、白身魚のカルパッチョと合わせるのがおすすめです。
蔵元: 富美菊酒造
産地: 富山県
アルコール度数: 14%
参考価格 (1800ml): ¥3,880 (税込)
【定番&食中酒】現代の王道、疾風のごとき爽快感:紀土 -KID- 純米吟醸 夏ノ疾風 (和歌山県・平和酒造)
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紀土 -KID- 純米吟醸 夏ノ疾風 720ml きっど 平和酒造
近年、絶大な人気を誇る和歌山の「紀土」は、もはや”現代の定番酒”。その名も「夏ノ疾風(なつのはやて)」は、うだるような夏に爽やかな風を吹かせる一本です。
青リンゴを思わせる香りと、シャープな酸がすっと広がる爽快な飲み口が特徴。
日本酒初心者から飲み慣れた方まで誰もが楽しめる完成度の高さで、夏の食中酒に最適です。
蔵元: 平和酒造
産地: 和歌山県
アルコール度数: 15%
参考価格 (720ml): ¥1,375 (税込)
【個性派にごり】シュワっと弾ける、米の旨味サイダー:陸奥八仙 夏どぶろっく (青森県・八戸酒造)

画像出典:KURANOSAKE MIROKUYA|陸奥八仙 夏どぶろっく純米活性にごり
いつもの夏酒に飽きたら、こんな刺激的な一本はいかがでしょう。
瓶の中で酵母が生き続ける「活性にごり酒」で、開栓には注意が必要ですが、そのスリルもまた一興。
一般的なにごり酒の甘いイメージとは異なり、力強い炭酸とキレのあるドライな味わいが特徴で、まさに「大人のライスサイダー」。
スパイシーな肉料理など、味の濃いスタミナ料理と最高の相性を見せます。
蔵元: 八戸酒造
産地: 青森県
アルコール度数: 13%
参考価格 (720ml): ¥1,760 (税込)
【新体験】氷で完成する、革新の夏酒:玉川 Ice Breaker (京都府・木下酒造)
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玉川 Ice Breaker(アイスブレーカー) 純米吟醸 無濾過生原酒[2025年蔵出し新酒]
日本酒の新たな可能性に挑戦したいあなたに捧げたいのが、英国人杜氏フィリップ・ハーパー氏が醸す「Ice Breaker」です。
コンセプトは「ロックで飲むために設計された日本酒」。氷が溶けるにつれて、力強くリッチな原酒の味わいが、次第にまろやかで清涼感のある飲み口へと変化していきます。
一杯のグラスの中で無限のグラデーションを体験できる、知的好奇心を刺激される一本です。
蔵元: 木下酒造
産地: 京都府
アルコール度数: 17-18%
参考価格 (500ml): ¥1,430 (税込)
もう迷わない!自分に合った夏酒の選び方

いざお店で夏酒を選ぼうとしても、種類が豊富でどれを選べば良いか迷ってしまうかもしれませんね。 ご安心ください。 いくつかのポイントを押さえるだけで、きっとあなた好みの1本が見つかります。
①味わいのタイプで選ぶ
まずは、ご自身の好みの味わいから選ぶのが王道です。 夏酒は大きく3つのタイプに分けられます。
キリッと爽快!「淡麗辛口」タイプ
キレのあるシャープな飲み口が好きな方におすすめなのが、このタイプです。
甘さが少なく、すっきりとした後味が特徴で、どんな料理にも合わせやすい万能選手。
夏の定番であるそうめんや冷奴といったさっぱりとした和食から、焼き魚のような香ばしい料理まで、幅広く食事の味を引き立ててくれます。
ビールのようにゴクゴクと飲みたい、という方にもぴったりです。
初心者にもおすすめ!「甘口・華やか」タイプ
日本酒のアルコール感が少し苦手、という方や、普段あまり日本酒を飲まない方には、フルーティーで華やかな香りが楽しめる甘口タイプがおすすめです。
まるで白ワインのように、マスカットやメロン、柑橘類を思わせる吟醸香と、お米由来の優しい甘みが口の中に広がります。
食前酒として楽しむのはもちろん、フルーツやスイーツと合わせるのも面白いでしょう。
新しい出会いを楽しむ!「にごり・スパークリング」タイプ
いつもとは一味違った夏酒を試してみたい方には、個性的なにごり酒やスパークリングタイプはいかがでしょうか。
「にごり酒」は、もろみを粗く濾しているため、お米の旨味や甘みがしっかりと感じられます。 クリーミーでとろりとした口当たりが特徴です。
一方、「スパークリングタイプ」は、シャンパンのようにシュワシュワとした炭酸ガスが心地よく、乾杯の一杯にも最適。 爽快な喉越しは、パーティーシーンを華やかに彩ってくれます。
②夏の料理とのペアリングで選ぶ

夏酒は、夏の旬の食材を使った料理との相性が抜群です。 その日の献立に合わせて選ぶのも、お酒選びの醍醐味と言えるでしょう。
さっぱりとした和食には「淡麗辛口」を
枝豆、冷奴、夏野菜の浅漬け、そうめん、アジの塩焼きといった、素材の味を活かした繊細な和食。
こうした料理には、味わいを邪魔せず、むしろ引き立ててくれる淡麗辛口の夏酒が最適です。 夏酒の持つ爽やかな酸味やキレが、料理の後味をさっぱりとさせ、次の一口を誘います。
互いの良さを消すことなく、見事なマリアージュを生み出してくれるでしょう。
スタミナ系の肉料理やエスニック料理には
夏のスタミナ補給に欠かせない、バーベキューや焼肉、うなぎの蒲焼。 あるいは、食欲をそそるスパイシーなガパオライスやカレーといったエスニック料理。
こうしたパワフルな料理には、味わいのしっかりした夏酒や、スパークリングタイプの夏酒がおすすめです。 お酒の持つ酸味や旨味、そして炭酸ガスが、料理の脂分をスッと洗い流し、口の中をリフレッシュさせてくれます。
料理に負けない存在感がありながら、後味は爽やかという、絶妙なバランスを楽しむことができます。
③見た目で選ぶ「ジャケ買い」も大いにアリ!
夏酒は、中身だけでなく外見も非常に個性的で魅力的です。
涼しげな水色や緑色の瓶、夏祭りを思わせるような賑やかなラベル、シンプルで洗練されたデザインなど、酒蔵のこだわりが詰まっています。
「なんだかよく分からないけど、このラベルが素敵!」といった直感で選ぶ「ジャケ買い」も、夏酒選びの楽しみ方の一つです。
味わいを想像しながら選ぶ時間もまた格別ですし、友人宅への手土産や、ちょっとしたプレゼントにしても喜ばれること間違いありません。
もっと美味しく!夏酒の楽しみ方と正しい保存方法

お気に入りの夏酒を手に入れたら、そのポテンシャルを最大限に引き出す飲み方と保存方法を知っておきましょう。 少しの工夫で、味わいは格段に向上します。
基本はキリッと冷やして!おすすめの飲み方アレンジ
夏酒の魅力を最もシンプルに味わうなら、冷蔵庫でしっかりと冷やして飲むのが基本です。
ワイングラスに注ぐと、繊細な香り立ちをより楽しむことができます。
さらに、以下のようなアレンジもおすすめです。
アレンジ例①:オンザロック
大きめのロックグラスに、かち割り氷をたっぷりと入れて夏酒を注ぐスタイルです。
最初はキリッとした味わいを、そして時間が経つにつれて氷が溶け、アルコール感が和らいでいくまろやかな味わいの変化を楽しむことができます。
特に、旨味のしっかりしたタイプや、原酒タイプの夏酒におすすめです。
アレンジ例②:ソーダ割り
爽快感をさらにアップさせたいなら、ソーダ割りが最適です。
夏酒とソーダを1:1で割るのが基本ですが、お好みに合わせて比率を変えてみてください。
レモンやライムを軽く搾ったり、ミントの葉を浮かべたりすると、より清涼感が増してカクテルのように楽しめます。
品質を保つための正しい保存方法
夏酒、特に「生」と表記のあるものは、火入れをしていない非常にデリケートなお酒です。 フレッシュな味わいを損なわないために、保存方法には注意が必要です。 以下のポイントを守って、最高の状態で夏酒を楽しみましょう。
必ず冷蔵庫で保存する
温度変化は酒質劣化の大きな原因になります。
購入後はすぐに冷蔵庫の野菜室など、温度が安定している場所で保管しましょう。
光を避ける
日本酒は日光や蛍光灯の光(紫外線)に弱く、当たると「日光臭」と呼ばれる不快な匂いが発生してしまいます。
瓶がむき出しの場合は、新聞紙で包むなどして光を遮断するのがおすすめです。
開封後は早めに飲み切る
空気に触れると酸化が進み、味わいが変化していきます。
開封後はしっかりと栓をして冷蔵庫で保存し、できれば1週間以内を目安に飲み切るようにしましょう。
まとめ:お気に入りの夏酒で、最高の夏を迎えよう!
この記事では、夏の暑さを吹き飛ばしてくれる爽やかな日本酒、「夏酒」について、その魅力から選び方、おすすめの銘柄、そして美味しい楽しみ方まで詳しくご紹介してきました。
すっきりと軽快な「淡麗辛口」、フルーティーで飲みやすい「甘口・華やか」、そして個性あふれる「にごり・スパークリング」など、夏酒の世界は実に多彩で奥深いものです。
また、涼しげなボトルデザインは、夏の食卓を豊かに彩ってくれるでしょう。
ぜひ、この記事を参考にして、酒屋さんやオンラインストアでお気に入りの一本を探してみてください。
あなたにぴったりの夏酒が、2025年の夏を忘れられない特別なものにしてくれるはずです。
最高の夏酒で、最高の乾杯を!
